ミャンマーで唯一、ルビー採掘権を持つ男、森孝仁。

 


 

 20歳の時、プロのバイクレーサーになることを目指す。周りと比べたら随分と遅いスタートであったものの、23歳の時から渡米し、10年間で目標であったデイトナで優勝を果たす。その後はスランプ、事故が続き、レーサー生命に終止符を打つ。自分の感性を信じ、変わらないものを追い求めて旅にでる。そしてミャンマーの宝石、ルビーに行き着いた。現在、43歳。日本で唯一採掘権を持つ男は、ミャンマーから時を超えても変わらない、ルビーの輝きを追い求めている。

 

 

01 時を超えても変わらないモノ。

 


 

 20歳の時に、テレビで見たデイトナに衝撃を受けて、そこでの優勝を目指してプロのバイクレーサーになりました。その念願が叶い、デイトナで優勝しました。しかしそこからは事故も続き、スランプとなり引退を余儀なくしました。夢は、自分が思い描いたところまでしか行けない。夢を見たところまでは行けるが、それ以降は欲張るということになる。引き時を見極めるのが大事なのです。

 そこから何か変わらないものを追い求めて、旅にでます。そこでとある宝石店でルビーに出会います。理由は分かりません。ただ、そのときに『これだ!』と思いました。直感に近いものです。そして輝きが変わらないものは、どうも本物のルビーだけであると知り、そのルビーはミャンマーでしか採れなかった。だからミャンマーに行きました。

 

 

02 究極の感性は『好き、嫌い』である。

 


 

 僕がバイクレーサー時の話です。バイクのマシンを試す為にテストライドをするのですが、エンジニアがデータをとるときに僕にこう言ったんです。

『どんなに最高のマシンでデータの解析をしても、ある所までしか行き着けない。人間を超えるセンサーはいまのところなく、データや統計や計算などの理性は、所詮、人間の感性を形にするためのプロセス、他の人と共有するためのツールにしか過ぎないという。導き出された理論や理屈よりも、結局はライダーさんの、『ちょっと変だ』の感覚の方が正しいんです。』

 

 この話が僕の中で一番、衝撃的だった。だからこそ、僕は感性を信じることにしています。そして自分の、『好き嫌い』という、理性に頼れないこの感覚こそが、究極の感性。

 正しいか正しくないかという判断基準ではなく、『好きか嫌いか』で決めるということこそ、僕の信じる所になりました。

 

 

03 空気感をもって世界に出る。

 

 今、中国、韓国が怒濤の勢いで世界に進出している。しかし、目先の投資、そして回収するというところが随分と見えてしまっている。こういった世界への進出は長続きしない。

 日本の労働環境だって、正直に効率的とは思えない。その上今は、労働時間を短くするだの、生活保護など言っている。現地に根付いた開発、一緒にその土地、国、文化を良くしようと言う『空気感』をもって世界に進出する日本人であれば、現地に深く受け入れられ5年や10年と言った単位で変わって行くような薄い絆にはならないはず。そう言う意味で、現場を思いやる空気感を持ち合わせて、世界にでていってほしいです。

 



 

04 唯一、採掘権を持てた理由。第一次産業と第三次産業を繋げる。

 

 僕が何故唯一、採掘権を持っているのか、理由を聞かれます。そもそも宝石業って、売るときは第三次産業です。外国から来るほとんどの人が、ミャンマーのルビーを買って、売るという第三次産業をしています。ルビーに金を払い買って、それで終わり。でもこれでは、ミャンマーの得にはなりにくい。自分たちの国にある財産が、お金と交換されているだけです。僕は、そう言う意味で、現地の雇用を創出しながら第一次産業をも活性化できるように、現地での採掘の手助けもしました。第一次産業と第三次産業を結びつけたのです。だからこそ、現地の人々が理念に共感してくれて採掘権を持てたのです。特に海外で、現地の人達と仕事をするのなら、心中をするという気持ちで、ビジネスをしなければなりません。  

 例えば、外国人でただ儲けてやりたいという人間たちは、大きいルビーしか買わない。僕は現地の人々も継続的に仕事ができるように、ビジネスになりにくい小さいルビーも買います。鉱山で働いている人達は僕の仲間であるという意識です。だからこそ、この人に仕事を渡したいとか、採掘権もこの人であれば任せられるということになるのです。

 

 

 

話を終えて:『人間の感性は究極である。』

 

 自分の感性、直感を信じるということはつまるところ、自分の『好き嫌い』に耳を傾けるということ。その感性を自分自身が信じた上で、周りの人にしっかりと伝えられ、巻き込める人。そこには現場を思いやる力と、巻き込める力が必要なのだ。

 自信とは自分を信じると書くのだが、自分をとことん信じている人は不思議と周りから信頼される。世界が急速に変化しても、自分の信じたもの変わらないもの、僕はコンパスとよんでいるのだが、それこそが大切な持ち物となるはずだ。

 今の時代に潮流なんて考えるのはナンセンスで、世界の潮流を考えた上で世界地図を持ち行動するのではなく、『自分自身のコンパス』を持つべきだ。これからは個が強くなり、世界では個と個がつながりを持って、新しい時代を創っている。

 

 自分の信じる道を突き詰めて、 変わらないものを追い求めミャンマーの地で活躍されている日本人、モリス森さん。これからも見ている先は、時を超えても変わらない輝きだ。

 

成瀬 勇輝

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ミャンマーで唯一、ルビー採掘権を持つ男、森孝仁。NOMAD PROJECT

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