FRENCH CHEF KEISUKE MATSUSHIMA



1977年福岡県生まれ。「料理人の素質がある」と母親に褒められたことがきっかけとなって、料理 の道を志す。小さい頃にコロンブスの伝記を読んで以来、海外に憧れを持つようになり、20歳で料理の修業のため渡仏。25歳で自分のレストランをニースに 持ち、その後28歳という若さでミシュラン一つ星を獲得。今は東京にも店を構え、世界を舞台に活躍している。

一つの道を極めれば全ての道に通ずる

僕は自分のことを料理人ではなく、クリエイターだと思っています。料理バカにはなりたくないんです。自分 が出来る事を一つに絞る必要は無いし、可能性は無限にある。「自分にはこれしかできない」って可能性を狭めないで、色んな事をパラレルにやっていけばいい じゃないですか。一つの道を極めれば全ての道に通ずる。だから何かに成功できたら他でもうまくできるし、自分の可能性を狭める必要は全くないんですよ。

 

本気で取ってやろうという姿勢があれば、夢の一つくらいは簡単に叶えられる

海外で成功したいなら、 語学は出来て当たり前。現地の言葉でしっかりシェフと話して、それを次に繋げないといけない。見よう見まねじゃ駄目なんです。それから、本気で取ってやろ うという姿勢が大切。僕はフランスに骨を埋める覚悟で来ました。この本気の姿勢があれば、夢の一つくらいは簡単に叶えられますよ。
僕は日本人では前人未到のことをやろうとしていたので、ロールモデルはいませんでした。ただライバルなら いて、それはフランスにお店を持っているフランス人。国は違えど同じ人間なんだし、俺にも出来るはずだっていつも思っていました。だから誰もがライバル。 そういう姿勢でいかないと海外で勝てないんですよね。

 

日本人の強みは、相手に合わせて変えていけること

僕の日本人としての強みは何か。まずは真面目さ。フランスでは、勤勉な日本人の労働姿勢が評価されている んです。この過去からの信用を失わないようにしなくちゃいけない。それから現地に合わせた食材を提供できる翻訳力。ホスピタリティとでも言うんでしょう か。相手に合わせて変えていく。僕は現地の食材をよく観察して、より良いものを提供できるように料理しています。日本は元々、加工貿易の国なので、相手に 合わせて何かを加工し、より良いものを提供するというのは得意分野だと思います。


伊万里焼きから未来へ

日本の芸術文化が世界に対して花開いたのは、日本人が高度な技術を持っていたから。昔はオランダがアジア から、青色陶器を輸入していました。主に中国から皿を買っていたけど、中国で内乱が起きたので、同じ技術を持っている日本に頼むことになったんです。それ が日本の輸出産業の走りだった。だけどしばらくして、オランダは日本からの輸入を辞めてしまいます。内乱が終わった中国との価格競争に負けたと思っている けど、そうではなくて。オランダは色付けされた派手な皿ではなく、アジア人にしか出来ない筆の落とし方で作る色彩のある皿が欲しかった。だけど輸出で豊か になっていた日本の技術者達は需要については考えずに、ただ自分たちの価値観の中で質が高いものを提供すれば良いと思っていたんですね。相手を理解してい なかったから、ガラパゴス化が起きた。供給サイドがイニシアティブを取ると、日本ではその産業がだめになる。今の携帯も同じでしょ。
今の日本には、海外から日本を引っ張れるプロモーターがいない。供給する人だけでなく、外の需要を見るこ とができるプロモーターが必要なんです。今までは日本の市場が大きかったから、海外のサービスを日本にいれて加工するだけでビジネスができていました。で も、これから日本の市場は小さくなる。だから逆の発想でビジネスをしていくべきなんです。

 

に自分の刀を磨いていれば、世界のどこででも闘える

『出る杭は打たれる』と言うけれど、日本にいて打たれると思ったら、海外へ行くという選択肢を持つ事も大事。でもこれだけワンピースが人気になっているのに、世界に出て行く人ってそんなに増えてない。自分の人生は、どうしても安全な道を選んでしまうんですよね。
みんな自分の刀を研いでないで、情報だけで生きている。その情報を使って自分を磨いていないし、深く考え てもいない。でも常に自分の刀を研いでいれば、世界のどこででも闘えるんです。僕は、フランスでミシュラン一つ星という強力な武器を手に入れた。これは世 界のどこにでも行ける最強の武器になりました。
若い人たちには、自分を磨きながら、「馬鹿力」を持って世界で挑戦してほしい。「馬鹿力」とは、失敗を恐れ ずに飛び抜けたことができること。そして飛び込んだ先で、常に輪の中心にいることが大切です。外に出たら、輪の中心にいるべきですよ。だから下ネタでウケ を取れる事はかなり重要。世界のどこにいても輪の中心にいられる力は、これから世界に出る人達にぜひ持ってほしいスキルですね。



 

世界で戦うシェフ、松嶋啓介

ニースの大通りに店を構える松嶋さん。彼は常に先を見据えつつ、確固たる姿勢をもって物事に挑み、夢→計 画→実行を繰り返して常に新しいことに挑戦し続けている。自分の歴史をしっかり持っていて、これから先進むべき道を示せる人物だ。未来を示すには、過去の 失敗としっかり向き合う必要がある。未来は過去の改善によって作っていくものだから、ビジネスはそうやって新しいものを生み出していくべきだろう。日本が世界に闘う上で必要なのは、日本を十分に理解した上でさらに外の需要をしっかりと理解しているプロモーター。この歴史を未来に紡ぐ力と、現地の需要を真に理解できる人材こそが、日本が今、必要としている人材ではないだろうか。
最後に、松嶋さんを紹介して頂いた僕の先輩である嶺井さんと、貴重なお時間を頂戴してお話させて頂いた松嶋さんに、改めて感謝します。



 

インタビュー:成瀬
文章校正:増田祐加

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