「最強の農業国:オランダに学ぶ物語」


『オランダ』と聞いて何をイメージするだろうか?風車、運 河、チューリップ、チーズ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ…。実はここオランダが、アメリカに次いで第2位の農業生産物輸出国であることはあまり知られて いない。その狭い国土にも関わらず、彼らは「世界最強の農業国」と言われているのである。

 

オランダが、国際的に農業で稼ぐ上で、
不利な条件を揚げてみよう。 まず国土面積の狭さ。国土面積は日本の50分の1しかない。 平坦な土地が多いが、それでも耕地面積は日本の4分の1。 農業者の総人口に対する比率では、2・5%と同規模だが、農業人口は日本の305万人に対して、オランダは43万人と日本の7分の1以下の規模。低温で日 照時間も恵まれない。日本の近くに例えればサハリン北部に相当する厳しい気候だ。またパートタイム労働者の時給が2000円近く、人件費も高い。 

それでいて、強い農業を形作っている。農業輸出は680億ドルでアメリカに次ぐ規模だ。これは日本の30倍に相当する。日 本の農業貿易は440億ドルの赤字だが、オランダは世界最高の250億ドルの黒字。小さくても世界で稼げる農業を実践している。日本の7分の1以下の農業 人口で、日本の2・5倍のばれいしょ、1・3倍の甜菜、3・5倍のマッシュルーム、1・2倍の豚肉、1・3倍の牛乳、を生産している。牛肉生産量も日本の 8割以上である。

 一言でいえば、自給率を捨てて、高付加価値なものに特化しているのだ。
(田村耕太郎さんの記事参照:稼ぐ農業のモデル:オランダ!
 
 なぜオランダは『世界最強の農業国』にまで成長することができたのか?
その理由を知るためにオランダへ飛び、現地で農業ビジネスを行なっているNature & MoreのMichaelに会って話を伺った。彼はロッテルダム近郊でオーガニック農場をやりつつ、国を超えて様々なプロジェクトを行なう優秀な起業家だ。


 テクノロジーの進化は農業分野においても目覚ましい。Nature & Moreは最新の技術を使い、グリーンハウス内の湿度、温度、光を徹底的に管理している。これにより常に最高の環境を維持し、質の高い作物を効率よく栽培 していくことが可能なのだ。それに加えて、彼らは虫さえもコントロールしている。害虫が繁殖する前にその天敵の虫を放つことによって、農薬を使わずに害虫 を駆除していくのである。このようにして安全で良質な作物を安定的に栽培できることが、彼らのビジネスの強みと言えるだろう。

 

「自分が手に取った商品には、一体どんな物語があるのか?」

 

 Nature&Moreで販売されている商品は、作った人の顔や思いをラベルやwebから知ることができる。商品それ自体だけでなく、背景にある物語も一緒に販売しているのだ。顔の見えない誰かが作った商品よりも、ずっと暖かみが感じられるのではないだろうか。
さらに顧客がその商品を購入後、どのようにして料理したか、その写真をfacebookやtwitterに ポストすると、オーガニックハンドクリームがもらえるキャンペーンも行なっている。これは買った後に続く物語をシェアすることによって、顧客と共にさらに 大きな物語を作っていっているのだ。
それに加えて、Nature&Moreは『世界を変える』という物語を描き、社会貢献活動にも積極 的だ。例えばアフリカに学校を設立するためのプロジェクトでは、アフリカの農家が作ったパイナップルをNature&Moreが販売し、その収益 の一部が寄付される仕組みになっている。これにより顧客は商品を買うという行為を通して気軽に社会貢献することができ、彼らが描く『世界を変える』という 物語の中に取り込まれていくのだ。Nature&Moreはまさにストーリーテラーなのである。


 オランダは小さい国ながらここまで農業を発展させてきた。それはこういった素晴らしき起業家たちが、より良 いものを作ろうとパイオニア精神を持って取り組んできた結果だろう。「小さくても世界で稼げる農業」を実践しているオランダから、日本の農業が学べること はたくさんあるはずだ。そして顧客と共に物語を紡いでいくことは、農業だけでなく他のビジネスでも重要となってくるに違いない。Nature&MoreのMichaelような物語を語れる起業家が、実際に世界を変えていくことができるのではないだろうか。

 

 

成瀬

このエントリーをはてなブックマークに追加
「最強の農業国:オランダに学ぶ物語」NOMAD PROJECT

コメントを残す